株式会社ほぼ日が主催する 「生活のたのしみ展」というイベントで4日間アルバイトをしました。そこで、サービス設計やコンテンツに関係・共通する体験をしたので、ブログに書いてみます。
生活のたのしみ展とは
2018年6/7〜6/11に恵比寿ガーデンプレイスで開催された「生活のたのしみ展」。普段ほぼ日で取り上げられる商品や扱われている商品を実際に販売する、というほぼ日がまるっとリアルに飛び出てきたような催しです。前回と前々回は六本木ヒルズで開催され、今回3度目の開催。 1度目は普通に客として参加し、2度目はほぼ日の塾生としてイベントレポートで参加し、3度目の今回はアルバイトとして主催者側での参加。
する方はあってもされる方の面接はめったにないので、バイトの面接はすごく緊張した… 無事採用して頂けてよかったです。
4日目から天候が崩れる
合計5日間の開催だったわけですが、4日目と5日目は雨でした。台風きてましたからね。 会場は一応屋根はあるもののほぼ野外。ガーデンプレイス側ともいろんな調整があったようで、4日目の日曜日は直接雨が当たってしまう約半分ぐらいの店舗を、少し離れた内部の別会場「グラススクエア」に移しての営業となりました。
この日の主な業務は、メイン会場からこの別会場に人を送ること。ここにサービス設計と同じような考察と試行錯誤がありました。
どうしたら別の会場に人を送れるか?
メイン会場の入り口から少し入ったところで、別会場「グラススクエア」への誘導。
ちょっと話が反れますが、前の日、階段の上にもお店があるのにそのエリアへはあまりお客さんが流れず、声がけをして誘導する、ということをしました。階段の上のお店はマップにも記されているし「上にもお店があります」という案内板もあるのに、お客さんは想像以上に「階段の上にあるお店」を認識しません。階段の下から上のお店は見えないので、直接目で見えていないものは非常に認識されづらい。 そのようなことがあったあとだったので、階段の上へ人を送るだけでも結構な難易度なのに、全く別の会場に人の興味を向けるのは更に難しい、という想像はつきました。
しばらく案内板通りに「グラススクエアはこちらです」と声がけをしてみましたが、なかなかお客さんは動いてくれません。
なぜ案内を聞いてもらえないのか
なぜ聞いてもらえないのだろうと考えたとき、そもそも前提として、
- お客さんは見えている範囲のメイン会場しかないと思いこんでいる(階段の上へ誘導の経験上から)
- お客さんは雨で半数の店舗が別会場に移動したことを知らない
- お客さんは店舗が別会場に移動するという発想がない
- お客さんは別会場の名前がグラススクエアだということを知らない
ということがあるなと思いました。
基本的に、お客さんはメイン会場しかないと思っているので、閉まっているお店を見てもその店舗が別会場に移動しているとは思いません。「ここの店舗が目当てだったのに!」という人以外は、閉まっているお店を見ても、ここは今日やっていないんだな、程度の認識なのかも。 「雨だから店が別の場所に移動する」という、主催者側からすると何でもない情報が、お客さんからするとイレギュラーな発想なので、そこにまずハードルがあるのですよね。そして、別会場の名前が「グラススクエア」だという情報は「雨だから店が別の場所に移動している」のさらに先にあるので、いきなり「グラススクエアはこちら」という案内板を見せられても何のことだかわからないのです。
ほぼ日の塾に通っていたとき、塾長の永田泰大さんから「人は、他の人の言っていること・やっていることに対して初めは、しらんがな、としか思っていない」という話を聞きました。自分に関係がある、もしくは何か興味を惹かれる、というポイントがないと聞いてももらえない、とはまさにこのことだなと。
どうしたら自分に関係あると思ってもらえるか
雨だから別会場があるというイレギュラーな状態であることを伝え、そこには期待するものがあるよ、という言い方なら耳を傾けてもらいやすいのではないか?
そこで、
- 今日は雨です(雨だよね)
- 雨なのでお店が移動しています(ここにはないよ)
- メイン会場以外にお店が移動した別会場があります(移動する必要があるよ)
- そこにたくさんのお店がある(そしたら楽しいことがあるよ)
と、あなたに関係あることですよ、を伝えるため「本日雨のため、たくさんの店舗が中の別会場に移動しています」という言い方に変えました。ポイントは「たくさんの店舗」「別会場」「移動」 という単語です。
その結果「ここ以外にもあるんだって〜」という声が聞こえるようになり、直接場所を聞かれることが多くなりました。グラススクエアという会場の名前は、実際に案内するときに伝えればいいので、声がけの情報として入れませんでした。案内板も「グラススクエアはこちら→」というものではなく、パッと伝わる「雨のため店舗が別会場に移動しています→」とかの方が良かったかもしれないですね。
案内板を目にしてすぐ案内の内容がわかる人もいると思うけど、生活のたのしみ展に来ている人たち全員がそうとは限らないので、できるだけ情報を伝えるハードルを下げた方が、あらゆる人に伝わるのではないかと思いました。
【追記:2018/6/14/17:00】
上記の一文を、
「ほぼ日の読者はある程度、情報の受け取り方に対してリテラシーの高さがあると思うけど、生活のたのしみ展に来ている人たち全員がそうとは限らないので、できるだけ情報を伝えるハードルを下げた方が、リテラシーが低い人にも高い人にも伝わるのではないかと思いました。」
という記載にしていましたが、「ほぼ日の読者」「リテラシーの高い・低い」という言葉から、 ほぼ日の読者と今回のイベント参加者にリテラシーの差があるような表現になってしまったこと、 そして運営側が解決すべき会場の問題を来場者のリテラシーに頼るような誤解を招く表現になってしまったことをお詫びします。 そのような意図はなかったため、該当箇所の撤回と修正をいたしました。 不快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。(追記ここまで)
どういう動線での案内が最適か
同時に、伝える場所もいくつか試してみました。
最初は入り口から少し入ったところで案内していたのですが、そこだとすぐ奥にこれから向かうつもりの並んでいるお店が見えるので、お客さんの興味はそっちにいってしまい、別の会場があるなんていうアナウンスは耳に入っていないようでした。
ではどこなら一番聞いてもらえるか。会場を一周回ってきて、奥の集合レジに辿りつき「ここで終わりかな?」って思ったタイミングで案内をすれば「お、まだあるんだな」と思ってもらえるのでは?と想像し、レジ前で案内してみると効果があり、会場を尋ねられる回数が増えました。
最初に案内していた入り口付近の方が別会場に近いのですが、もう一人別のアルバイトの人にわたしのいるレジ前から別会場までの途中に立ってもらい、まずはその人までを案内し、続きの案内はその人にお願いしました。おかげで少し離れた場所を長々と説明しなくて済み、この連携は結構うまくいったと思います。
コンテンツとUX設計に共通すること
というわけで「どのような単語を使ったり、どんな情報を先に伝えると、続きに興味を持ってもらえるか」の話はコンテンツでも同じことが言えるし(この辺はかなりほぼ日の塾で学びました)、「どういうタイミングと場所で伝えると効果的か」という場所の話はUX/UI設計と同じだと思いました。
普段は画面に向かってこういうことを考えているのですが、実際にユーザー(今回でいうとお客さん)の反応を見ながら、細かくPDCAを回せる環境でやってみるとめちゃくちゃ勉強になりますね、、基本的な本質の部分の考えは何事も同じなのだな。
学ぶことが多かった
他にも、エリアマネージャーたちの、会場をいかにうまく回すか、の動きはマネジメントの勉強になったし、次々起こる予想外の出来事を目の当たりにして、イベントを主催するっていうのはすげー大変なんだなっていうことがいろいろ見られてよかったです。
5日中4日の参加で、しかもそのうち金曜日と月曜日は有給、土日も返上、それで時給1,000円っていうと「なんで会社休んでバイトなんかすんの??」と不思議がられたりもしましたが、あれだけでかいイベントの裏側を見られることには大きな価値がありましたし、上記のような学びもあり、良い経験になりました。
お世話になったみなさん、ありがとうございました。